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ワークシェアリング
[ワークシェアリング]

英語でWork Sharing。雇用機会、労働時間、賃金という3つの要素の組み合わせを変化させることを通じて、限られた雇用量を、より多くの労働者の間で分かち合うことです。日本では不況下での厳しい雇用情勢の改善に効果があると期待され、大きな関心と注目を集めました。

ワークシェアリングのケーススタディ

導入の目的はゆとりある働き方の実現<br />景気回復とともに忘れられつつある?

ワークシェアリングの先駆例と言われているのが、半導体製造装置メーカーのA社のケースです。A社は半導体チップを樹脂で封止する装置では世界有数のシェアを占めるグローバル企業ですが、3年前、ITバブル崩壊による深刻な半導体不況に直面しました。会社はできる限り雇用を維持して不況を乗り切るため、3カ月間、工場に週3休制を導入する一方、有給休暇を除く月当たり3日分について、会社都合による休業補償として日割り給与の80%を支給することで従業員側と合意しました。これにより従業員の給与は月額7000〜8000円の減額になりました。

総合電機メーカーのB社も、4年前、電化機器部門が極度の業績不振に見舞われたため、中国への生産移転などで仕事量が減った兵庫県の工場で1年間、ワークシェアリング制度を導入した経緯があります。またトラックメーカーのC社には、子育てや介護ための短期間勤務制度があり、それを応用することで10カ月間の期間限定でワークシェアリングを実現しました。勤務時間を7時間55分から7時間へ短縮、基準内賃金を時間比例で11.57%減額したのです。いずれも短期的な雇用調整手段の一つとして参考になります。

しかし半導体の需要が世界的に回復、電機業界はデジタル家電の売り上げ増に沸き、自動車業界も好調な輸出に支えされて業況が好転しました。景気が上向くとともに、こうした労使が痛みを伴うタイムシェアリングはいつの間にか忘れ去られようとしています。

ワークシェアリングの先進国とされるオランダでは、企業が雇用を約束することで、労働者は時短による賃金削減を受け入れますが、政府が社会保険料の引き下げと減税で収入が減った分を補填するシステムを取っています。さらに正社員と臨時労働者の賃金格差を法律で禁じることで、女性や高齢者の就労が進んだと言われています。日本のワークシェアリングは不況下での雇用維持を目的としてスタートしたものだったにせよ、最終的には、勤労者が働き過ぎと言われる生活から脱却し、ゆとりのある生活を目指す、という高い理想がありました。今一度、ワークシェアリングの持つ意味について考えてみる必要があるのではないでしょうか。(参考資料=社会経済生産性本部「わが国におけるワークシェアリングの実践例」)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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