「賞与」計算の仕方
(1)賞与の確認
●賞与と月次給与との違い
賞与と月次給与の違いは何なのか。所得税では、月次給与と賞与の違いについて、明確な定義は存在しない。月次給与も賞与も年末調整の際に合算して「給与所得」として扱い、源泉所得税の清算を行うからだ。また、雇用保険では「労働の対償」として支払われる金額に一定の料率を乗じて計算しており、両者に違いはないと言える。
それに対して、健康保険と厚生年金保険では、賞与と月次給与に関して明確な取り扱いの違いが存在する。ここでは賞与の捉え方を「一時的に支払われる金品のこと」とし、その際、金額の過多にかかわらず「予定回数が年3回以下」のものを賞与に当てはまるとしている。そして、「予定回数が年4回以上」の場合、これらを全て月次給与として扱う。つまり、賞与となるかどうかについては予定回数が重要であり、金額で決まるものではないということだ。賞与ではなく月次給与と判断された場合には、月次給与と合算した金額に対する保険料が、月次給与から徴収される。
(2)支給項目、控除項目の計上
●賞与を計算するために必要な項目とは
賞与を計算するためには、支給項目、控除項目に関しての金額を計上し、賞与支払いに関する所定の方式(計算式)にのっとって支給金額を算出する。
不就労控除を賞与の支給時に行う会社もある。問題は、控除項目の計上である。名称が賞与であっても、予定回数が4回以上の場合、健康保険(介護保険)・厚生年金保険では月次給与扱いとなり、賞与として保険料を徴収しないことがあるので注意が必要だ。
健康保険(介護保険)、厚生年金保険 | 健康保険(介護保険)・厚生年金保険の賞与における保険料は、「標準賞与に保険料率を乗じた金額」となり、この金額を被保険者と事業主が折半負担する。また、月次給与と同様に賞与でも事業主のみ「子ども・子育て拠出金」を負担する。この場合、標準賞与(賞与額から1000円未満の端数を切り捨てた金額)に保険料率を乗じた金額を負担することになる。なお、保険料率は賞与支給月の月末時点のものを適用するが、保険料率は健康保険組合の規約改正や法律改正によって随時変更があるので、注意が必要である。 |
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雇用保険 | 雇用保険料は、月次給与と同様に「総支給額×保険料率」にて算出する。 |
所得税 | 所得税の算出に関しては、以下のような「計算手順ステップ(*)」を踏み、賞与における所得税額を決定していく。 |
その他 | 賞与においても、社会保険料、所得税、住民税以外の金額を控除する場合は、労使協定が必要となる(なお、賞与では住民税は徴収されない)。 |
1.「賞与収入金額」を求める | 「賞与の総支給額」-「非課税の賞与収入」 |
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2.「社会保険料控除後の賞与金額」を求める | 「賞与収入金額」-「社会保険料」 |
3.「扶養家族等の数」を求める | 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から扶養家族などの数を求める |
4.「前月の月次給与における社会保険料控除後の給与金額」を求める | 前月の月次給与の明細(賃金台帳)から、社会保険料控除後の給与金額を求める |
5.賞与に対する「税率」を求める | 「3.扶養家族等の数」「4.前月の月次給与における社会保険料控除後の給与金額」を、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめ、賞与に対する税率を求める |
6.「所得税額」を決定する | 「2.社会保険料控除後の賞与金額」×「5.賞与に対する税率」により、所得税額を決定する |
(3)支払い業務
●「総支給額」から「総控除額」を差し引いた「差引支給額」を支払う
支給項目欄の「総支給額」から、控除項目欄の「総控除額」を差し引いた金額が「差引支給額」となり、これが従業員に対する支給額となる。支払いの際には、月次給与と同様に明細書を従業員に交付し、支払い後は「賞与支払届」を年金事務所(健康保険組合)に提出する。
- 【支給項目】
- ・賞与
- ・不就労控除
- ・総支給額
- 【控除項目】
- ・健康保険
- ・うち介護保険
- ・厚生年金保険
- ・雇用保険
- ・社会保険料合計
- ・課税対象額
- ・所得税
- ・住民税
- ・住宅取得などその他控除
- ・総控除額
- 【集計】
- ・差引支給額