給与計算.jpトップ > よくわかる講座&記事 > 給与支払の「仕組み」
このエントリーをはてなブックマークに追加

給与支払の「仕組み」

(1)給与(賃金)を構成する要素

●「月次給与」と「賞与」に区分される

一般的に、会社の賃金体系は下表のように、「月次給与」と「賞与」に大きく区分される。月次給与は「基本給」「役職手当」「通勤手当」「割増賃金(時間外手当、深夜手当、休日手当)」「不就労控除」などから構成される。また、これら内容については、賃金規程(就業規則)において明示することが求められる。

【賃金を構成する要素】
月次給与 基本給
役職手当
通勤手当
割増賃金 時間外手当
深夜手当
休日手当
不就労控除
賞与

●基本給

イメージ基本給とは、役職手当、通勤手当、割増賃金などを除いた基本賃金のこと。決定基準などを具体的に明示するのではなく、「基本給は、本人の職務内容、経験、技能、勤務成績、年齢などを考慮して各人ごとに決定する」といったように、決定要素の大枠だけを記載するのが一般的である。その際、多くの会社では各社の基準となる独自の「基本給表」を設けている。

●役職手当

課長、部長などの役職に対して、支払われる手当。会社内の役職と役職手当の関係が明確になっている場合は、役職手当の表を明記することが多い。

●通勤手当

勤務地へ通勤するために支払われる手当。必ず支払わなくてはならないものではないが、実態としてはほとんどの会社が支払っている。通勤手当を支給する場合、支給形態(日割、定期券代など)を定めておくと同時に、支払金額の上限を設定するのが一般的である。これらについては、賃金規程や雇用契約書で定め、その規定に従って支払うことになる。その場合、限度額を5万円としている会社が多いようだ(労務行政研究所の調査)。

●割増賃金

割増賃金とは、使用者が労働者に対して時間外労働(残業)・休日労働・深夜業を行わせた場合に支払わなければならない賃金で、「労働基準法第37条」によって以下の通りに定められている。なお、これらの割増率に対しては、そもそも労働した時間分の対価が前提としてあるため、1~3については100%の加算が必要である。また、4の深夜部分については、1~3と重複して支給されることから、さらに100%加算する必要はない。例えば「休日+深夜」であれば、「135%+25%=160%」となる。

【割増賃金の種類】
1.法定休日における労働時間 35%以上
2.上記1を除き、1日につき8時間を超過した労働時間 25%以上
3.上記1、2を除き、1週40時間を超えた労働時間 25%以上
4.22時~翌5時における労働時間 25%以上

●不就労控除

不就労控除とは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則により、欠勤や遅刻、早退、私用外出などで働かなかった(不就労)時間分の賃金を、給与から差し引く(控除)ことである。月次給与は基本給など定額の項目が多く、定額部分の金額を変更することが煩雑なため、月次給与を減算する項目が必要となっている。

●賞与

賞与は、「定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と定義されている。「労働基準法第11条」により賞与も賃金にあたるが、「労働基準法第24条2項ただし書」により、一定期日払いの原則からは除外されている。また、定期的に支給される月次給与とは異なり、必ず支給しなければならないものではなく、支給要件や支給時期、算定方法などは原則、使用者と労働者の間で自由に決めることができる。

(2)控除項目

●賃金から控除される項目とは

本来、賃金は総支給額の全額を労働者に支払うことになっている(「全額払いの原則」)。しかし、実際には法律や労使協定などにより、さまざまな金額を控除することになるため、それらを規定しておく必要がある。賃金から控除される項目には、以下のものがある。

【控除項目】
所得税 所得税は1月1日から12月31日までの賃金に課せられるものであるが、年末にまとめて賦課されるわけではない。事業主は賃金を支払う都度、支払金額に応じた所得税を控除することが義務付けられている(源泉所得税)。控除した所得税は、支払月の翌月10日までに事業主が納税手続きを行う。
住民税 住民税は、都道府県民税と市区町村民税を合わせた税金で、前年の1月1日から12月31日までの所得に対して課せられる。所得税と異なり、この期間の所得に応じて翌年から賦課される。
なお、住民税の納税方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があるが、賃金に関する住民税の納付方法は特別徴収が原則となっている。差し引いた住民税は、支払月の翌月10日までに事業主が納付手続きを行う。
*特別徴収:6月~翌年5月の毎月、事業主が従業員の月次給与から控除し、納税する
*普通徴収:会社を通さず、従業員が個々に居住する市区町村に納税する
社会保険としての健康保険(介護保険)、厚生年金保険、雇用保険の保険料の被保険者負担分 社会保険の被保険者となっている場合、従業員は保険料を負担する義務があるため、賃金から社会保険料の被保険者分を控除される。
従業員代表との書面による協定により、賃金から控除することとしたもの 上記の項目については、法令の定めにより賃金から控除することが認められているが、仮払金、財形貯蓄積立金など、その他の金額を控除する場合には、「労使協定(労働協約)の締結」が必要となる。

(3)確認事項

●支払方法

月次給与に関しては、「締切日」と「支払日」を必ず定め、確認することだ。また、手当ごとに締切日が異なる場合には、それぞれについて規定する必要がある。この時、締切日と支払日が近接しているに越したことはないが、ミスを引き起こさないよう、無理のない期間設定を設けることである。

賞与に関しては、「在籍要件」と「支給日要件」を定めて、確認する。在籍要件とは、対象者が支給対象期間に在籍していれば、期間按分された賞与額が確定するというもの。また、支給日要件は、賞与支給日の在籍の有無によって支給の有無が確定するというものである。賞与は会社業績に左右されることが多いため、支給するかどうかに関しては事業主が決定しても構わないが、従業員個々への支払いの有無については、在籍要件と支給日要件を明確に定め、支給方法が事業主の恣意的なものにならないようする。

●労働協約(労使協定)

「労働基準法」では、労働協約の方が就業規則より優位に立っているため、労働協約の中に、賃金に関する定めがあるかどうかを確認する必要がある。例えば、賃金から「従業員積立金」や「財形貯金」などを控除する場合、労働協約あるいは労使協定の締結が必要となるため、賃金控除に関する規定があるかどうかの確認が求められる。もし定めがない場合は賃金の全額払いの原則に反することになるので、注意が必要である。

●法令

賃金は労働者にとって、非常に重要な部分を占める。「労働基準法第1条」が定める「人たるに値する生活を営むために必要を充たすべきものでなければならない」が実現できない内容では、法律違反となるのは明らかだ。そのような点からも、賃金には最低限、以下のような条件が求められる。

【賃金に求められる最低限の条件】
基本原則
  • 均等待遇
    「労働基準法第3条」で、国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金などの条件について差別的な取り扱いをしないことを定めている。
  • 男女同一賃金の原則
    「労働基準法第4条」で、女性の賃金について、男性との差別的取り扱いを禁止している。
賃金支払の5原則
  • 日本円で、本人に、全額を、月1回以上、同じ日に支払う
    「労働基準法第24条」で、賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定に期日を定めて支払わなければならないことを定めている。
最低賃金
  • 最低賃金を下回らない
    「最低賃金法」により、事業主が労働者に支払う賃金には最低限度が定められており、1時間当たりの賃金額が最低賃金額を下回ることはできない。違反した場合には、最高50万円の罰金が科せられることがあるので、トラブルを避けるためにも最低賃金を再確認することだ。なお最低賃金には、地域別と産業別があり、金額の高い方が適用される。

←前の記事へ次の記事へ→

企画・編集:『日本の人事部』編集部

給与計算のアウトソーシング先をお探しの企業様へ

『給与計算.jp』の掲載企業・サービスについて事務局のスタッフが、ご紹介・ご案内いたします。

  • 掲載企業に一括お問合せが可能です
  • 特定の企業に絞ってのお問合せもできます
  • 企業選定のご相談も承ります

まずは下記「お問合せ」ボタンをクリックし、ご連絡先、ご要望等を入力の上、事務局までお気軽にお問合せください。

お問合せ
「給与計算.jp」内の専門サイト
プライバシーマーク