香港 解雇補償金へのMPF充当廃止、来年発表か
勤労者の解雇補償金や長期服務金(勤続5年以上の勤労者で被解雇者や定年退職者に支払われる退職金)への強制退職年金基金(MPF)の充当廃止が、来年1月に予定される梁振英行政長官の施政報告(施政方針演説)に盛り込まれるようだ。労働界が求めていたもので、企業にとっては負担が増えることになる。
16日付星島日報が伝えた。香港政府に近い筋によると、充当の廃止は過去にさかのぼって適用することはない。企業は長期服務金と解雇補償金を企業が拠出するMPF資金で相殺することができなくなり、負担が増えることになる。雇用主が充当の廃止前に従業員を大量に解雇する可能性があるため、実施のタイミングを慎重に見極める必要があるという。
香港大学社会福祉学部の梁祖彬(ジョー・リョン)名誉教授によると、2009年から14年まで、MPF資金から毎年26億~30億HKドル(約403億~465億円)が解雇補償金と長期服務金に充当されている。これまでに充当されたMPF資金の総額は少なくとも230億HKドルに上るという。
労働界が支持母体の梁行政長官は、「MPF資金を解雇補償金や長期服務金に充当する比率を引き下げる」を12年の行政長官選挙の公約として掲げていた。ただ企業の負担が増加することから財界が反発しており、実施できずにいる。
■雇用条例の法定休暇を年17日に
政府は雇用条例で規定されている法定休暇(労工假期)を現行の年間12日から17日増やすことも検討しているようだ。1年間に1日ずつ増やしていく案などが検討されているという。
香港の法定休暇は、雇用条例で規定されている「労工假期」と一般祝祭日条例(公衆假期条例)で規定され政府部門や教育機関、銀行などに適用される「一般祝祭日」がある。一般祝祭日は年間17日となっており、香港最大の労働団体、香港工会聯合会(工聯会)が労工假期も17日とするよう求めている。
労工假期の増加は財界がコスト増になると反発している。政府の試算によると、労工假期が12日から17日に増えると、香港企業全体で年間18億3,000万HKドルの人件費増となる。政府関係者によると、政府内では財界の反発を軽減するために、5年間かけて1年に1日ずつ労工假期を増やしていく案が検討されている。
解雇補償金、長期服務金へのMPF資金の充当廃止や労工假期の増加に加えて、香港では標準労働時間の導入も検討されており、企業の人件費増加が続きそうな流れにある。<香港>
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(The Daily NNA労務・人事・安全ニュース http://news.nna.jp/ /9月17日号より転載)