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専門家コラム

第121回 令和6年分所得税の定額減税の概要

2024-05-22 テーマ: 人事給与アウトソーシング

2023年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」で示された定額減税について、2024年3月28日に税制改正関連法が成立したことにより、2024年分の所得税と住民税について定額の特別控除(定額減税)が実施されることが決定しました。

住民税の減税は市区町村で行いますが、今回の所得税の定額減税は、これまでになく複雑な制度です。実際の所得税の減税は6月1日以降に支払われる給与や賞与で行います。

それでは、2024年に行われる所得税の定額減税についてみていきましょう。

 

<居住者とは>

今回の定額減税は、居住者が対象となります。定額減税の説明をする前に、居住者の定義について先に確認をしましょう。

 

所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいいます。一方で、「居住者」以外の個人を「非居住者」と呼びます。

 

「住所」は、「個人の生活の本拠」のことです。「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって」判定することになります。つまり、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されることになります。

それに対し、「居所」は「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

 

<定額減税の対象者>

2024年分所得税について、定額減税の適用を受けることができるのは、2024年分所得税の納税者である居住者で、2024年分の所得税にかかる合計所得金額が1,805万円以下である人です。

所得金額がすべて給与収入のみの場合は、給与収入が2,000万円以下である必要があります。所得金額がすべて給与収入のみの場合で、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下になります。

 

<定額減税の額>

減税額については、同一生計配偶者と扶養親族の数に応じて金額が決定されます。同一生計配偶者と扶養親族の定義については、以下のとおりです。

 

同一生計配偶者:12月31日の現況で、納税者と生計を一にする配偶者で、年間の合計所得金額が48万円以下の人のことをいいます。

 

扶養親族: 12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

2)納税者と生計を一にしていること。

3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。

4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。

 

このため、給与や賞与の所得税の計算では扶養親族数としてカウントしない16歳未満の扶養親族も、定額減税の際の扶養親族数にはカウントする必要があります。

 

具体的な所得税の定額減税の額は、次の通りです。

1)日本に居住している本人:30,000円

2)日本に居住している同一生計配偶者または扶養親族:一人につき30,000円

 

たとえば、同一生計配偶者:あり 扶養親族:2名の場合

30,000円(本人分)+90,000円(同一生計配偶者と扶養親族の合計)=120,000円

が減税額となります。

 

<定額減税の方法>

給与所得者に対する所得税の定額減税は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に対して、その給与の支払い者のもとで、給与や賞与を支払う際に源泉徴収税額から定額減税額を控除する方法で行われます。

会社が行う定額減税の事務には、毎月の給与や賞与で控除する「月次減税事務」と、年末調整の際に行う「年調減税事務」の2つがあります。

今回は、月次減税事務に絞って、説明を続けます。

 

月次減税事務は、2024年6月1日以後最初に支払われる給与や賞与に課税される源泉徴収税額から、定額減税額を控除することになります。

6月以降に最初に支払われる給与や賞与から定額減税額を控除しても、全額を控除しきれない場合は、2024年中に支払われる次の給与や賞与から順次控除することになります。

 

なお、月次減税事務の段階では、2024年分の合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人に対しても行う必要があるので、注意してください。

 

<定額減税を行う対象者の確認作業>

2024年6月1日現在で、在職者のうち、給与等の源泉徴収において、源泉徴収税額表の甲欄が適用されている居住者をピックアップします。定額減税を行うのは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している勤務先から支払われる給与や賞与に限られます。

最近では、ダブルワークを行っている方が増えていますので、定額減税を行う前にしっかりと確認を行う必要があります。

 

なお、以下に該当する方は、定額減税の対象となりません。

・2024年6月1日以後支払う給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用されている人(扶養控除等(異動)申告書を提出していない人)

・2024年6月2日以後に給与支払者のもとで勤務することとなった人

・2024年5月31日以前に給与支払者のもとを退職した人

・2024年5月31日以前に出国して非居住者となった人

 

 

今回は、2024年6月に行われる所得税の定額減税の概要についてみてきました。次回は、具体的な計算方法や実務について説明していきます。

鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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