第35回 毎月の給与からの源泉所得税の徴収
平成29年1月より「源泉徴収税額表」が変更になりました。そのため、1月以降に支払う給与や賞与は12月までの所得税と異なる方が出てきます。
給与計算にソフトを使用していると自動的に所得税の計算がされることがあります。そのため、源泉所得税の金額が変更になっていることに、担当者が気がついていない場合もあるようです。従業員から「今月の所得税がおかしいのでは?」「どのような仕組みで所得税が計算されているのか?」といった問い合わせを受けるケースもあります。
今回は、源泉所得税の基本的な仕組みについてみていきたいと思います。
<源泉所得税の仕組み>
会社から給与を受けている人のことを、給与所得者と呼びます。給与所得者には、所得税と復興特別所得税が課税されています。復興特別所得税とは、東日本大震災から復興するための費用を幅広く全国民で負担するために、期間を限定して上乗せしている税金です。
給与所得者の所得税(復興特別所得税を含む。以下、同じ。)は、会社が毎月の給与や賞与から徴収し、その年の最後に年末調整を行って精算します。
毎月の給与やボーナスから源泉徴収される所得税の額は、「給与所得の源泉徴収税額表」により計算します。1年間の給与総額に対する所得税の額と毎月の給与から源泉徴収された所得税の合計額は必ずしも一致しません。
これは、以下の2つが主な理由としてあげられます。
1)子の結婚や就職などにより年の中途で控除対象扶養親族の数が変わる場合があるから。
2)生命保険料控除や配偶者特別控除などは年末に一度に控除することとなっているから。
このため、その年の最後に、過不足額の精算が行われます。これを「年末調整」といいます。大部分の給与所得者は、年末調整によって1年間の所得税の納税が完了しますので、確定申告の必要はありません。
簡単にいえば、毎月の給与やボーナスからは、概算で所得税を控除しておき、年末調整で年税額を確定して還付や徴収をすることにより、納税を完了させるということです。
<源泉所得税の税額表>
給与所得の源泉徴収税額表には、「月額表」と「日額表」と「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の3種類があります。
給与や賞与の総額から、通勤費のような「非課税所得」と健康保険料や雇用保険料といった「社会保険料」を控除した金額を税額表にあてはめて「所得税額」を計算します。
「月額表」を使うのは、給与を毎月支払う場合です。また、月や旬を単位にして支払う給与も「月額表」を使います。たとえば、半月ごとや10日ごと、3か月ごと、半年ごとなどに給与を支払う場合です。
「日額表」を使うのは、働いたその日ごとに給与を支払う場合です。また、一週間ごとに支払う給与も「日額表」を使います。このほか、日割り計算して支払う給与も「日額表」を使います。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は読んで字のごとくボーナスを支払うときに使用します。ただし例外があり、前月中に支払われた給与がない場合や、ボーナスの金額が前月の給与の金額の10倍を超えるような場合は、「月額表」を使います。
<税額表の甲欄、乙欄等の使用方法>
次に税額表に記載されている「甲欄」「乙欄」「丙欄」についてみていきます。
甲欄を使用するには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されている必要があります。提出がない場合には「乙欄」で税額を求めます。
たまに、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されていないにもかかわらず、「甲欄」で計算しているケースがあります。たとえば、年末調整の対象にならない年収2000万円以上の役員が申告書を提出していないようなケースです。
しかし、年末調整をした・しないにかかわらず、扶養控除等申告書を提出していないのに甲欄で計算するのは誤りです。該当者がいる場合は、すぐに申告書を提出してもらうようにしましょう。
「丙欄」は「日額表」だけにあります。この表は、日雇いの人や短期間雇い入れるアルバイトなどに一定の給与を支払う場合に使います。
<今回のまとめ>
毎月積み重ねていくと所得税は高額になります。処理を誤って低い金額の所得税を毎月徴収していると、年末調整時に多くの不足分を徴収する必要が出てきます。また、税務調査の際に誤りを指摘され、遡及して所得税を徴収する必要が出てくるケースもあります。
給与ソフトを使用している場合でも、会社がソフトを更新しないと法改正が反映されないこともあります。税額表の変更という良い機会ですので、はやめに正しい処理がなされているかを確認しましょう。
鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問 | |
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。 (有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。 |
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