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毎月の給与計算実務の流れ

(1)計算を始めるまでの準備

給与計算を行うにあたっては、作業を始める前に決めておくべきことがあり、また計算のもとになるさまざまな情報(データ)を集めておく必要があります。

給与支給日の決定

毎月1回以上、一定の決まった期日に支給することが給与の原則です。この原則さえ守れば、支給日は企業が自由に決めることができます。

イメージ給与支給日は、締め日(給与計算の対象期間の最後の日)とセットで考えて決めることが重要です。締め日から支給日までの間には、確実にその月の給与計算を終わらせ、振込の場合は銀行への振り込み手続きなども完了しなくてはなりません。
作業量とスタッフのマンパワー、さらには社内のその他の業務とのバランスなどを考慮して、ある程度の余裕を持たせたスケジュールにすることが望ましいでしょう。

また、注意しなくてはならないのは、締め日と支給日が月をまたぐと年末年始がちょうど給与計算を行う時期に当たってしまうことです。そのため一般的なのは、月の前半から中盤(10日、15日など)で締めて、月の後半(25日など)に支給するパターンです。

人事データの整備

固定的給与の支給分を正しく計算するには、まず人事データ(社員情報)の確認が不可欠です。基本給や固定的な手当類は、勤続年数や年齢、職種、職位、役職などに応じて決まりますので、給与計算を行う場合には、まずこれらに変動がないかを確認します。

また、家族の増減があると家族手当や所得税額が変わりますし、勤務地や住所が変わると通勤交通費が変わってきます。給与の総支給額が変動すると、標準報酬月額が変更になり、社会保険料の控除額も変わってきます。

一般的に、最低限登録しておきたい情報は以下のような項目になります。

  • 氏名(ふりがなも)
  • 性別(社会保険手続きの際に必要です)
  • 生年月日
  • 入社年月日
  • 住所
  • 雇用保険の被保険者番号
  • 標準報酬月額
  • 住民税
  • 基本給、手当
  • 振込口座
  • 扶養家族
  • 勤務地(複数事業所がある場合)
  • 職種
  • 職位、役職
  • その他の控除項目

給与計算を行う場合には、毎月これらの項目に変更がないか確認し、給与計算ソフトなどを利用している場合はデータベースを変更しておきます。新入社員(新卒、中途とも)があった場合は、これらの人事データを正しく登録しておかなくては給与計算を開始することができません。

基本給と諸手当の決定

給与の中心は基本給であり、それを補助するのが諸手当です。諸手当のうち労働基準法上、支払わなくてはならない規定になっているのは、「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」です。これ以外の手当については、各企業が自由に決めることができます。

近年では、給与は仕事の能力や成果に対して支払うものだという考え方が一般的になってきたため、年齢や家族構成といった属人的要素によって決まる部分については徐々に減りつつあります。

●手当の例

◇営業手当 ◇役職手当 ◇日直手当 ◇宿直手当 ◇職級手当 ◇危険手当 ◇家族手当
◇住宅手当 ◇単身赴任手当 ◇地域手当 ◇皆勤手当 ◇精勤手当 ◇資格手当 
◇時間外勤務手当 ◇休日勤務手当 ◇深夜勤務手当 ◇通勤手当  ◇持株奨励金 ◇報奨金

基本給についても手当についても、その計算方法や支給の仕組みについては、すべて「就業規則」に明記しておかなくてはなりません。これは、労働基準法に、就業規則に絶対に記載しなくてはならない事項(絶対的必要記載事項)として「賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め・支払いの時期、昇給に関する事項」が定められているためです。この項目は、就業規則とは別に「給与規程」として独立させてもかまいません。

特に分かりやすく明記しておくべきなのは、法律に規定がなく企業が独自に決められる部分です。欠勤控除や日割り計算などのルールがこれに当たります。法律の規定がないため、従業員が十分に理解していないと、実際に給与が支給されてからトラブルになったりするためです。

就業規則(給与規程)は、作成して労働基準監督署に提出するとともに、従業員が見たい時にすぐに見ることができる場所に保管しておくことも必要です。

通勤交通費の決定

イメージほとんどの企業が通勤交通費を支給しているのが現状ですが、法律上は必ず支給しなくてはならないといった規定はありません。そのため、支給するかしないかだけでなく、支払う場合の上限や先払いか後払いかなども、企業で独自に決めることができます。

公共交通機関を利用する場合の通勤交通費は、月10万円までは非課税です。マイカーや自転車を利用する場合は距離によって非課税限度額が変わってきますので注意が必要です。

公共交通機関の場合、3カ月・6カ月といった長期間の定期券を利用すると割引率が高く、定期券を「現物」で支給する場合もあります。しかし、これは「給与の現物支給」に当たりますので、事前に労働組合との間で労働協約を交わしておく必要があります。また、支給後に退職した場合や、転居・異動などで通勤経路が変わったりした場合は、精算に手間がかかることも考慮しておくべきでしょう。

労働保険料の準備

「労災保険」と「雇用保険」の労働保険料は、毎月の給与の総支給額に保険料率を掛けて計算します。
最終的には、4月1日から翌年の3月31日までを保険年度として、その間の賃金総額(交通費含む)に保険料率を掛けた金額が1年間の労働保険料となりますので、3月31日の時点で「確定保険料」を再計算し、それまでに納付した「概算保険料」との過不足分を精算します。これを「労働保険の年度更新」といい、業務は5月に行います。

●労災保険
従業員負担分はなく、全額が企業負担となります。したがって給与からの控除はありません。労災保険は業種によって保険料率が異なりますので、自社がどの業種に該当するのかを確認しておきます。

●雇用保険
従業員と企業が双方で負担しますが、それぞれの割合は異なります。また、農林水産・清酒製造、建設業では保険料率自体も異なります。雇用保険料の従業員負担分については給与から控除しますが、条件によっては「雇用保険の被保険者にならない場合」があるので、そういう従業員からは控除しないように注意しなくてはなりません。 特に給与計算ソフトを利用するは、全従業員から自動的に雇用保険料を控除する設定になっていないか確認しておくことが重要です。

【雇用保険の被保険者にならないケースとは】
  1. 65歳の誕生日以降に雇い入れられた者
  2. 週の所定労働時間が通常の社員より短く40時間未満で、1年以上雇用する見込みがない者
  3. 週の所定労働時間が20時間未満の者

また、被保険者でも4月1日に満64歳以上であればその年の雇用保険料は免除されます。

社会保険料の準備

「健康保険」「介護保険」と「厚生年金保険」の社会保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。いずれも従業員負担分と企業負担分があり、従業員分については総支給額から控除します。

「標準報酬月額」は、社会保険料の計算をしやすくするためのもので、毎年4月・5月・6月の3カ月間の給与の平均額を「標準報酬月額表」に当てはめて決定されます。こうすることで、残業代などで給与支給額が毎月変動しても、社会保険料は一定金額を控除すればよい仕組みになっています。

標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の給与支給実績をもとに7月に改定されます。これを「定時決定」といいます。定時決定以外で標準報酬月額が変動するのは以下のような場合です。

  1. 「資格取得時決定」:新しく企業に入社した時
  2. 「随時決定」:昇給などによって固定的給与が大幅に変動した時
  3. 「育児休業等終了時改定」:育児休業から復職したが短時間勤務などによって給与が変動した時

随時決定のケースでは、給与の変動があって3カ月間の平均給与が、以前の標準報酬月額より2等級以上変動した場合に手続きが必要になります。 標準報酬月額が変更された場合には、社会保険事務所や各健康保険組合に届け出なくてはなりません。

●厚生年金保険
厚生年金保険の保険料率は、平成29年9月まで毎年上がることが決まっています。給与計算を行う場合には、毎年保険料率を変更することが必要です。

●健康保険・介護保険
保険料率は、政府管掌健康保険や各健康保険組合によって異なります。自社が利用している健康保険の料率を確認しておくことは欠かせません。 また、40歳以上65歳未満の従業員については「介護保険料」もあわせて控除、納付することになります。給与計算を行う場合には、対象者を確認することが重要です。

健康保険・厚生年金保険・介護保険については、被保険者資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月の分までを月単位で納付します。 この時に注意が必要なのは、資格喪失日は「退職の翌日」となることです。そのため、月末退職の場合は、翌月の1日が資格喪失日となり、退職した月の分まで保険料を控除しなくてはなりません。

所得税

所得税に関しては、毎月の給与から支給額に応じた「源泉所得税」を控除し、企業が従業員に代わって税務署に納付します。最終的な所得税額は、1月1日から12月31日までの1年間に得られた所得によって決まりますので、12月末の時点で源泉徴収した額との差額を「年末調整」で精算します。

源泉所得税を計算するには、「源泉徴収税額票」を用いますが、その際に必要になるのが、従業員一人一人の扶養家族等の数です。扶養家族の数によって、同じ所得でも源泉所得税が変わってくるためです。

源泉徴収税額票には、「月額表」と「日額表」があります。

●月額表:月ごとに給与を支給する場合に利用。半月ごと、10日ごとなどの場合にも月額表で計算。
●日額表:日ごとに給与を支給する場合に利用。1週間ごとや日割り計算にも用います。

(2)毎月の給与計算を行う

割増賃金

割増賃金は、「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」の支給のために計算します。基本的な計算式は以下のようになります。

【1時間あたりの賃金】×【割増しになる労働時間数】×【割増率】

●1時間あたり賃金
給与を月給で支給している場合には、まず月給を1カ月の平均所定勤務時間数で割って、1時間あたり賃金を求めます。 この場合の「月給」には、基本給や諸手当が含まれますが、以下の手当は含めなくてもよいとされています。

  • 家族手当(家族数に応じて支給されている場合)
  • 通勤交通費(実費を支給している場合)
  • 住宅手当(住宅費用に応じて支給している場合)
  • 別居手当(単身赴任手当など)
  • 子女教育手当
  • 臨時に支払われる賃金(退職金など)
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

注意したいのは、家族手当・通勤交通費・住宅手当に関しては、「一律に支給している場合」は月給に含めなくてはならないということです。また、「上記の手当以外の手当」はすべて月給に含めなくてはなりません。

また、1カ月の平均所定勤務時間数は、「(365日-年間所定休日日数)×1日の所定労働時間数÷12カ月」で求めます。

●割増率
「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」のそれぞれの割増率は以下のようになります。

  • 時間外勤務手当:2割5分増し以上
  • 休日勤務手当:3割5分増し以上
  • 深夜勤務手当:2割5分増し以上

深夜勤務は、午後10時から翌午前5時までの勤務がこれに当たります。残業が長引いて深夜にまで至った場合は、午後10時以降の時間については「時間外」と「深夜」が両方該当しますので、合計で「5割増し以上」で支給しなくてはなりません。

注意したいのは、深夜が5割増しではなく、「時間外と深夜をあわせて5割増し」だということです。単純に深夜を5割増しと考えると、さらに時間外割増しまで払うことになり、結果的に払い過ぎになってしまいます。

休日勤務は、これが週40時間を超える勤務であっても、さらに時間外割増しがかかることはありません。休日割増しには時間外割増しも含まれていると考えてください。 ただし、休日勤務が深夜にまで及んだ場合には、「休日」と「深夜」が両方該当するため、合計で「6割増し以上」で支給することになります。

●割増の対象となる勤務
時間外勤務については、「法定労働時間」を超えた勤務が割増対象となります。また、休日勤務については、「法定休日」に出勤した場合が対象です。企業ごとに決めた「所定労働時間」を超えた勤務や「所定休日」の出勤については割増しが義務づけられているわけではありません。 詳しくは「労働法規の基礎知識」を参照ください。

欠勤控除

「ノーワーク・ノーペイの原則」から、欠勤や遅刻・早退に関しては、働いていない時間分の賃金は支払う必要はありません。ただ、労働基準法には、これらの働いてない時間分の賃金を「控除しなくてはならない」という規定はありませんので、控除するかしないか、また控除する場合の計算方法なども企業が自由に決めることができます。

もっとも多いパターンは、割増賃金の計算で利用した「1時間あたりの賃金」に欠勤時間数を掛けて控除する方法です。 また、欠勤が多い場合には、「出勤した時間分の給与を計算して支給」することも可能です。この場合は、何日以上欠勤したら控除方式から支給方式に切り替えるかを事前に決めておくことが必要です。

端数処理

割増賃金や欠勤控除の日割り計算などを行うと端数が出ることがあります。

●割増賃金の端数処理
労働基準法で端数処理の法則が定められています。

残業時間などの集計については、1カ月分を合計して、1時間未満の端数が出た場合には、「30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げ」として計算します。たとえば、1カ月の残業時間の合計が「10時間20分」であれば「10時間」として計算してかまいません。

ただし、1日ごとにこの端数処理を行うことは許されません。あくまでも1カ月分を合計した時間に対してのみ切り上げ、切り捨てができます。

また、割増賃金を計算した結果、1円未満の端数が出た場合については、「50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ」となります。ただし、これについては会社独自のルールで1円未満すべてを切り上げても従業員に有利になるので問題はありません。

●日割り計算
こちらは法律に規定がないため、企業で独自にルールを定めることができます。一般的には、「50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ」、または従業員に有利なように1円未満すべてを切り上げとしているケースが多いようです。

社会保険料の控除額計算

「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料(40歳以上65歳未満の従業員のみ)」、及び「雇用保険料」の従業員負担分を計算して控除します。

控除した保険料は、それぞれ所定の官庁や団体に納付します。

●労働保険料
雇用保険料と労災保険料は、「領収済通知書」によって、各都道府県の労働局に4月1日から5月20日までの間に全額納付します。 ただし、保険料の額が40万円を超えている場合、または労働保険事務組合に委託している場合は、年3回の分納が認められています。

●健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料
控除した当月分の保険料は、健康保険組合や社会保険庁から送られてくる「保険料納入告知書」によって、翌月末日までに納付します。

源泉所得税

源泉所得税は、課税所得(総支給額から非課税交通費を引いた額)から社会保険料控除額を引いた額を、「源泉徴収税額表」に当てはめて求めます。

源泉徴収税額表には、扶養親族の人数が0人から7人までに別れた「甲欄」がありますので、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されている場合は、該当する人数によって控除する源泉所得税が決まります。

また、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されていない場合は、自動的に「乙欄」の源泉所得税額となりますが、こちらは「甲欄」の扶養親族0人の場合よりもかなり割高になってしまいます。

一般的には、年末調整の時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を従業員に記入してもらい、まとめて税務署に提出します。新入社員(新卒、中途とも)の場合は、最初の給与が支給されるまでに記入してもらい提出するのが原則です。

源泉徴収した所得税は、翌月の10日までに税務署に納付します。
また、従業員が常時9名以下の企業の場合は、申告書を税務署に提出すれば、半年分をまとめて納付できる特例があります。

住民税控除

給与所得者の場合、住民税についても、企業が給与から控除し従業員に代わって各自治体(市区町村)に納付する「特別徴収」が原則です。

そのため企業は、毎年1月31日までに、社員が1月1日現在で居住している自治体に、前年(1月1日から12月31日まで)の給与額を「給与支払報告書」によって通知しなくてはなりません。
各自治体は、この給与額をもとに一人一人の住民税額を計算し、5月31日までにその額を記した「特別徴収税額の決定通知書」を企業に送ってきます。

給与計算上は、この「特別徴収税額の決定通知書」にもとづいて6月から翌年5月まで住民税を控除し、翌月10日までに金融機関などを通じて各自治体に納付します。

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