給与計算とは
企業と従業員は、労働に対して給与(賃金)を支払う「労働契約」の下で結ばれている。給与は従業員が生活を営むために不可欠なものであり、期日までに正確に支払われなければならない。従業員もそのことを前提として考えており、「給与計算」は人事実務上、非常に重要な業務ということができる。
(1)給与計算の「目的」
●従業員へ支払う給与の金額を計算する
企業における給与計算には、大きく二つの目的がある。一つ目は、就業規則や賃金規程など会社のルールに従って、従業員へ支払う給与の金額を計算することである。支払いに関しては法律で定められた一定のルールが適用されるので、間違いは許されない。例えば「労働基準法第24条」では、給与は毎月最低1回支払わなくてはならないと定められている。その他にも決められている法的制限を順守し、給与計算を行わなくてはならない。会社には正社員だけではなく、アルバイト・パートや契約社員、嘱託社員などさまざまな雇用形態の従業員がいるケースがあるので、雇用形態それぞれのルールに応じて、異なる計算処理を行う必要もある。
●社会保険、税金に関する事務を、国や地方自治体などに代わって行う
二つ目は、国や都道府県、市区町村、年金事務所に納付するための税金、保険料の金額を計算することである。国に対しては所得税、都道府県・市区町村へは住民税、年金事務所には社会保険料を算出・控除し、納付する義務がある。その際、個々の従業員の扶養家族の増減によって所得税が変動したり、給与支給額の変動によって社会保険料が変更になったりするほか、法改正に応じた処理方法の変更などが毎年のようにあるので、給与計算に誤りがないよう、注意が必要だ。
(2)給与計算(ミス)が及ぼす影響
●誤った計算・処理は、多方面に影響を及ぼすことに
一定以上の規模の企業では、給与計算はパッケージソフトを使うケースが多いが、その場合も人間が処理するので“誤入力”“抜け漏れ”などが起こる可能性があり、常に正しく計算業務が行われるとは限らない。給与計算を間違えると、その影響はさまざまな方面に及ぶことになる。
まず、計算を間違えた従業員に状況を説明し、後日、支給額の調整を行う必要がある。支給する金額が足りなかった場合は追加で支給。過払い処理をしてしまった場合には戻してもらうことになるので、金額によっては何回かに分けて返金してもらうなど、一定の配慮が必要になるだろう。また、支給金額を間違えたタイミングによっては、翌月以降の給与支給時に調整することができず、再計算の必要が生じるケースもある。
また、税金については、当該年の1月~12月の所得に応じて決定するので、年をまたいでしまう誤処理はできない制約がある。何か問題が起きた場合は、なるべく同一年に調整処理を完結するよう対処することだ。
支給額の誤りに関しては、本人との調整だけでなく、場合によっては社会保険料の修正など、各役所への届出も必要となるため、影響範囲はさらに拡大することになる。このような点からも、給与計算に当たっては細心の注意を払うことである。